知的に生きるヒント

100年単位でデジタル情報を記録するメディア、DOTS

私がとても好きで読んでいるブログに、長い目で世界をみる Long Now Foundation があります。

何もかもが高速に起こり、すばやく忘れ去られるいまの世界で、Long Now Blog は長い長い時間、情報を存続させる方法やその技術、考え方について模索することをテーマにしています。ここでいう長い時間というのは一目盛りが100年で数えられ、到達点として10000年ほどのスケールを想定しています。

このスケールになると、さまざまなことを考慮しなければいかなる情報も存続しえません。まず記録していいる媒体が風化、劣化して情報が失われることが第一に考えられます。

先日は写真データをSDカードにいれてアルバムとして保存している場合、数年でデータが消失するという話題が Togetter でまとめられていました。

要注意!写真データをメモリーカードにアルバム用途で保管してはいけません | Togetter

媒体が劣化、故障する以外にも、そもそもデータの読み取り方がわからなくなってしまうという問題もあり得ます。たとえば数千年後の人間に時計の動かしかた一つを伝えるにしても、言語がもう使われていない可能性、文化があまりに違うので図のピクトグラムなどの解釈が伝わらないといったことを考慮しなければいけません。

つまりデータを100年単位で残すには、媒体が劣化しないことに加えて、データを読みだすために別の機械が必要ではないこと、データ自身に自分自身の説明と読み出し方を自明な形で記録する必要があるということです。

これらすべてに一つの答えを与える技術が、Group 47 がコダックの特許を集めてつくった DOTS という技術です。

劣化に強い、光学的に冗長なメディア

DOTS は風化や電磁パルスといった影響をうける磁気テープや不揮発性メモリなどと違って、そうした影響を受けにくい相変化合金の表面に直接レーザーで刻印をするという方式をとっています。表面の屈折率を変化させることで、暗い部分と明るい部分を作って、データを書き込みます。

原理的にはなんでも描きこむことができますが、面白いのはこうした方法の場合、専用の読み取り機械がなくなったとしても顕微鏡を使えば直接目視でデータを読み出すことが(非常に面倒でも)原理的に可能な点です。

DOTSは冒頭部分に読み出し方を書いたロゼッタ・リーダー部分を備え、自分自身の読み出し方やメタデータを保持していますので、書き込み方法さえちゃんとしていればデジタルデータの暗黒時代も乗り越えることが可能となります。

試算では1ペタバイトのデータを100年保存しようとした場合、空調した設備に保管して、メディアが劣化する前に約30回マイグレーションする必要があります。もちろん、マイグレーション時、保管時のデータの改変リスクもあります。

DOTSの場合は室温(-9度〜65以内)で、そのまま保存しておけばいいので、大幅なコストダウンの上にリスクも低減できるというわけです。

ちょっとできすぎている気もするけど、夢のある話

この技術はもともとコダック社の開発したもので、DOTSを開発している Group 47はそれを集め、利用することを目的に設立された団体です。なぜか日本語のPRスライドも…。

相変化合金の上に刻印する方法が特許の骨子で、これは確かに長期間のデータ保持に向いている手段のようです。海水でも大丈夫であるのに、唯一の弱点が酸性の液体で、スプライトにつけておいたら腐食したというユーモアのある話題も紹介されているのですが、これは通常の保管であれば情報はそのまま残るということを意味します。多少の水没でも、大丈夫でしょう。

ちょっと出来過ぎな話のような気もするので、本格的に使用する前にはかなりのテストを行わないといけないでしょうけれども、これは今後人間の文明が必須とする話題でもあります。

人間の生み出すデータが桁違いに膨大になってゆくなか、それを保存しきれずに文明が後世に伝えられないというリスクは高まっています。大きな災害や戦争などによって、文明がデジタル時代以前に巻き戻ってしまったらそれこそ大いなる損失です。

どのような媒体に、どのようなエンコードで情報を残すか。それは人間の知的遺産を守る、地味ですが今後ますます大事になる話題なのです。