知的に生きるヒント

Buzzfeedとは何か?をわかりにくい2軸から考えてみる

5分ほど、時間はありますか? あると仮定して、話を進めましょう。

ニューヨーク発の世界を席巻しているウェブメディア、Buzzfeed の日本版がローンチして、話題になっています。日本ではヤフー株式会社(Yahoo! Japan)との合弁会社として去年の8月に設立され、サイトの準備が整えられていました。

それにしても、新聞や雑誌、あるいは週刊誌と比較しても、Buzzfeedのトップページは奇妙な具合です。新聞で紙面に踊っているトップニュースの姿はそこにはありません。いや、たまにはあるのですが、アクセスによってリアルタイムにその場所は浮き沈みしていくのです。

かわりに、「名曲『どんなときも。』の歌詞を全て駅名にして歌う猛者登場 何回見てもジワる」といった反応に困るタイトルの記事や、「目から光線を放つ犬たち14選」といった具合にどうしてそれをまとめたのだろうかと不思議になる翻訳記事が踊っています。

Buzzfeedとはなんなのでしょうか? 私は門外漢にすぎませんが、公開されている情報だけで気になった、二つの評価軸について書いてみたいと思います。

第一の軸: 内容ではなく、秒速で反応できるか

第一の軸は、誰に、どんなコンテンツを届けるかという、メディアの出し入れでいうなら「出し」のほうの話です。新聞は速報性のあるニュースを、ブログは同じくニュースやオピニオンなど、どちらかというと書かれたものの中身で判断するので、すべてのコンテンツは中身で判断するものだと思い込みがちです。

しかし、たとえば初日に投稿されていた「雪の京都が東京より美しいことを示す、10の写真」こういった記事において中身はなんでしょう?

この記事、どれも記者本人が撮影したものではなく、ソーシャルメディアで流れていたものを拾い集めて編集しています。「これをオジリナルのコンテンツといっていいの?」という問いは重要ですが、ひとまず横に置いておきましょう。「他人の投稿をまとめただけじゃないか」と同じくらいの重みで、「記者の美的感覚で投稿を集めて編集しているところに価値がある」とも言えるからです。これはこれで、議論に値する題材ではあるのですが。

それよりも面白いのは、この記者は知り合いによればたいへん力のあるライターさんで(実際いくつか記事をよませていただいてお腹をかかえて笑ってしまったのですが)媒体によってちゃんと書き分ける高い能力の持ち主だという点です。Buzzfeedの記事は、明らかに Buzzfeed らしさを考慮してこう「作られて」いるのです。

この記事に限らず、欧米の記事をざっとみても共通項は明らかで、1. 「犬が最高な◯◯個の理由」といった引きの強いリスティクル、2. スパイスとして使用されている画像やイラスト、3. 文章はほとんどない「見るだけでよい」を徹底した構成です。

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これはスマートフォン上において秒速で消費し、秒速でシェアすることを目的としているコンテンツで、そのためには1行だって説明をいれるのは余分で、記事に対する反応スピードを殺してしまうのです。「こんなの、中身がないじゃないか!」という批判は、Buzzfeed にはすこし見当違いです。バイラルメディアでもずいぶんいわれたことですが、その最終進化系として、消費のされ方が違うメディアなのです。

これは良いか悪いかではなくて、そういうものなのです。

第二の軸:広告がみあたらない体験

Buzzfeed を見渡して、数あるバイラルメディアと一線を画しているのは、ページ内に一切のバナー広告がないという点です。このあたりに Yahoo! Japan との合弁がからんできます。

広告領域においては、BuzzFeed Japanが提供する広告の独占販売権をYahoo! JAPANが所有します。日本のデジタルマーケティングにおいて多岐に渡るソリューションを提供し、広告主および広告会社と広い接点を持つYahoo! JAPANの強みを活かし、メディアコンテンツを活用した広告を提供していく予定です。

Buzzfeed の収入源は英語サイトですっかり有名になった Advertorial という、コンテンツと記事が渾然一体となった形式で、その代表例をいくつかみればああなるほどと納得がいきます。

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たとえば “9 Things That Have Changed In The Last 20 Years” という記事は、上のものと同様、この20年で変わったものを画像だけで紹介していきます。スポンサーはモトローラ社の Razor という携帯なのですが、最後の項目で「昔の携帯・今の携帯」というところで広告されている製品が登場します。

これは本当に秀逸です。この記事の場合、ネイティブアドでよく批判がある「記事だと思って読んだら広告だった」が、クリエイティブに乗り越えられてる面があります。なるほど最後の携帯は広告なのですが、そもそも記事タイトルで書いてあった20年前と違う9つのもの、はちゃんと紹介されていましたよね。この9つである必要ないじゃないかといったツッコミは無駄です。消費されているのは中身じゃなくて、アテンションなのですから。

従来のメディアが大雑把にいって内容で読者をつなぎとめ、記事を読ませることで併置してある広告に誘導するメディアだとするならば、Buzzfeed のおそろしくシンプルな記事構成は読者のアテンションをひきよせ、そこにスポンサーのコンテンツを混ぜるという手法になってます。

これは上手にやったばあいには読者に広告をみせることなく収益を上げられるわけですから、イノベーションといえます。一方で、読者のアテンションをわりと無意味に(でも刹那の楽しみとして)消費する形で収益を上げるのはどうなのかと疑問をもつ人もいるかもしれません。でもそれだって、いいだしたらきりがないことですよね。

まとめ

私はこうした理屈っぽいブログを書いていることもあって文章や論理から構成された中身を読みたいほうなのですが、そんな私でも電車に立ったまま揺られているときに友人から流れてくる文章をゆっくりと読むよりは、反応しやすいコンテンツに目が吸い寄せられることはよくあります。

Buzzfeedは、読者の一瞬のアテンションになにを与えるかにすべてを賭けている「ショートアテンション・メディア」といってもいいでしょう。これを必要ないというひとも当然いるはずですが、どんどんとスマートフォンに向かっている時間が短く細分化され、瞬時にコンテンツが消費される社会にあって、この最適化が有効だというのは認めないといけません。

一方で、Buzzfeed の記事には長いアテンションを、人がとびつく時事問題で切り取ってゆくラインもあります。「原発事故に節目はあるのか? 廃炉調査同行ルポ」などは文章は長いのですが、咀嚼の難しい考察はあえて含まず、読み手のアテンションを巧みに刺激している読み物になっています。

いずれにしても、なにが消費されているのか? どこに収益が発生しているのか? を考えることは Buzzfeed にかぎらず、他のメディアを読み取る上でも面白い考察軸となります。

私もときには書いてみようかなと思ってしまいます。5分も待つことができない人に、私はなにを与えられるのかと想像しながら。