絵本原画展「きかんしゃトーマスとなかまたち」と、オリジナルのもつ力について

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子供たちが好きということもあって、横浜そごう美術館で開催されている絵本原画展「きかんしゃトーマスとなかまたち」を見てきました。

「きかんしゃトーマス」といえば人形(最近はちょっと怖いCGですが)で撮影されたTVシリーズが長年人気ですが、我が家ではむしろ元となった「汽車のえほん」シリーズの方で楽しんでいます。

今回の原画展では、ウィルバート・オードリーの原作に複数のイラストレーターがつけた「汽車のえほん」の原画に加えて、TVシリーズで使用された鉄道模型などが展示されていてみごたえがあります。

「絵本の絵でしょ?」とあなどることなかれ。やはり印刷されたものよりも、原画のもつ力というものはあるのです。今回の原画展で注目したいのは、トーマスのビジュアルを最初に決定づけたレジナルド・ダルビーの原画から、それを継承していったジョン・T・ケニーと、ピーターとガンバー・エドワーズの夫妻という、一連の絵の進化です。

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写真はおみやげに買ったポストカード。面白かったのは、トーマスのビジュアルで最も知られているレジナルド・ダルビーが、実は最も最初のイラストレーターではなかったこと、そして作者のウィルバート・オードリーも彼の絵に満足してはいなかったという点です。

ずんぐりとしてひょうきんな機関車たちの見た目、ビビッドな原色と田園風景のとけあうスタイル。これらは第二次大戦直後の時代には大きなインパクトを与え、一部では「文章はいまいちだが、絵がすばらしい」とまで評されるほど。

しかし大きな支持をうけたレジナルド・ダルビーの絵も、原作者のウィルバート・オードリーには不満で、特に機関車パーシーのタンク機関車としてのフォルムで意見が合わなかった二人は決裂してしまいます。

しかし、原作者ウィルバート・オードリーがただの偏屈な牧師でないことは、展示されている原作のスケッチをみるとすぐにわかります。彼はイラストレーターに対して非常に高い理想をもって、実現してほしいビジョンがあったのです。

レジナルド・ダルビーを引き継いだジョン・T・ケニーは、ウィルバート・オードリーも満足するくらいに機関車の描写が正確で、ケニー自身駅に通って機関車のスケッチを繰り返していたそうです。

機関車の絵本で正確さ? と可笑しい気持ちになるかもしれませんが、原画をみるとなるほどとうなります。顔の部分のひょうきんさは、残りの機関部分が正確に描かれていることで引き立つのです。

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しかしジョン・T・ケニーは視力の低下で降板を余儀なくされます。そこで受け継いだのが、ガンバー・エドワーズとその夫のピーターです。写真は図録に掲載されていて、構図が好きな「トビーのつなわたり」のうちの一枚。

二人の画家はそれぞれ風景部分と機関車の部分と、得意分野で協力しあっていたということを初めて知ったのですが、それがトーマスの後半絵本にあったあの不思議な雰囲気を作っていたのだと納得できました。作者が二人いたのか!

展示会全体をみた印象は、やはりオリジナルはすばらしいということ。というより、やはりポプラ社の「汽車のえほん」の色の発色は少しくすんでいるのではないかというずっともっていた疑念になんとなく答えが得られた形に。

というわけで、図録も買ってしまいました。絵は美しいのですが、イラストレーターたちについての記述が少ないのがちょっと残念。

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レゴでつくったトーマスも!子供が座れますので記念写真にどうぞ。

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展示の一部には子供が遊べる場所もあります。プラレールの展示もありますので、子供連れでも楽しいです。

すこし残念な点とまとめ

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ただ、子供が喜びそうな展示会にしては2点だけ改善してほしかった点が。

一つ目は展示の高さが少しだけ高く、5歳児ほどでは首が痛くなるほど見上げないといけない点です。あと10-15cm低いと子供が楽に見れるかもしれません。

もう一点は、プラレール展示など、子供がとびつきそうな部分が角の切り立った多少危険な台座になっているところです。

というのは、私の目の前で2歳ほどの子供がこの台座に向かって転んで額を切ってしまい大騒ぎになっていたからです。流血の事態でちょっと大変でした…。

とはいえ絵本の原画、しかも半世紀以上愛されてきたイギリスの幻の田園風景は、みていて心が温まります。

子供ができるまでは見向きもしていなかった世界ですが、ここまで人気を保っていて、いまも新作の映画が作られているのはこの豊富なイメージのもつ力だということが原画展をみていてもわかります。

原画展の一角には原鉄道模型博物館から出張してきている、トーマスたちの原型となった機関車の精巧なモデルも展示されていますので、こちらも一見の価値ありですよ。

会期は5月18日までですので、ぜひ横浜へ!

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